サウナで「ととのう」
サウナとは「サウナ室に入ること」ではなく「サウナ→水風呂→外気浴」を一連のセットで行うことをいうそうです。なぜこのように、水風呂・外気浴も含めるかというと「ととのう」ために必要な手順だからです。
そもそも「ととのう」とは何かというと、身体はリラックスしているけど脳は興奮している状態のことであり、「サウナハイ」「サウナトランス」ともいいます。サウナと水風呂の温度差によって身体は交感神経優位になり、脳ではアドレナリンが分泌された状態に。その後の外気浴では副交感神経が優位になり、この時にはじめて「ととのう」ことになります。アドレナリンは代謝に時間がかかるので、脳内には残ったまま。そのため、身体はリラックスしているけど頭は興奮した状態になります。
サウナのメリット
アンチエイジング効果
サウナに入ることでNAMPTという酵素を介し、サーチュインといった健康関連物質が活性化するため、アンチエイジング効果が期待できます★。東フィンランド大学の研究(2015年)によると、週に2〜3回サウナに入る人は、サウナに入らない人に比べ心血管病による死亡リスクが27%少なかったことが分かりました。また、同大学の別の研究(2017年)でも、サウナに入ることで認知症やアルツハイマー病のリスクが65%減少するとされています。他にも普段から、サウナを利用している人は炎症レベルが低かったという報告もあり★、健康で長生きするにはサウナは有効だと思われます。
サウナに入ることで肌も綺麗になるかもしれません。血流量が増え、肌の新陳代謝が促進されることにより、肌質の改善が期待できます。また、サウナに入るとHSPという物質が分泌されますが、これによって細胞の修復も生じます。
HSP(Heat Shock Protein)
傷んだ細胞を修復する働きをもつタンパク質のこと。免疫細胞の働きや乳酸の発生を遅らせる働きもある。
さらに、汗をかくことで加齢臭の原因である皮脂も除去されるので臭い対策にもなります。
メンタル安定効果
サウナにはメンタルを安定化させる働きもあります。サウナに入ることで、β-エンドルフィン・ダイノルフィンといった物質が分泌されますが、これらの働きによってメンタル効果がもたらされるようです★。実際に、ウィスコンシン大学の研究(2016年)によると、サウナに30分入ったことによりうつ病の症状が軽減したそうです。また、その抗うつ効果は抗精神薬の2.5倍近くもあり、6週間も持続したようです。サウナに入ることでストレス対策になるかもしれませんね。
安眠効果
睡眠には記憶の定着や老廃物の除去といった役割があるにも関わらず、日本人の大半は睡眠の質が悪いと言われています。そんな睡眠問題を解決する手段として「サウナ」があります。RMIT大学の研究(2019年)によると、定期的にサウナを利用している人の83.5%が睡眠の改善を報告したという結果がでています。なぜ睡眠の質を改善するのかというと、サウナに入ることによりDPGが拡大するからだそうです★。
DPG(Distal-Proximal skin temperatue Gradient)
深部体温と抹消体温との差のこと。DPGが拡大することで睡眠のスイッチが入り、眠気が生じる。
脳トレ効果
サウナによって脳機能が高まる可能性があります。サウナに入ることによって脳のα波が正常化し、認知機能や集中力の向上が期待できます★。またβ波が増加することも分かっており、クリエイティビティが高まり、アイデアを閃きやすくなるかもしれません。
α波
脳波の1種。適切な周波数・振幅である状態が脳にとって最もよい。
認知症の人はα波の周波数が低下している。
β波
脳波の1種。α波よりも周波数が高い。
緊張している時は増加し、リラックスしている時は低下する。
サウナの入り方
サウナによって「ととのう」を感じるためには「サウナ→水風呂→外気浴」をセットで行う必要があります。セット数に関しては、最初は1セット、慣れてきたら3〜4セット行えるといいそうです。注意点としては、水分補給をしっかりすること。サウナによって500〜1000mlの水分が失われるので、脱水予防のためにもこまめに水分を摂ることが大事です。
サウナ室
サウナ室に入ったら、あぐらか体育座りの姿勢がオススメです。その理由としては、体の高低差をなくしムラなく全身を温めるため。サウナ室では一段上段に登るほど10度も温度が変わるそう。なるべく同じ段に身体を留めておくことで、身体に均一の熱を感じることができます。なので、他の人の邪魔にならないようなら、あぐらや体育座りのような姿勢を試してみてください。
サウナ室を出る時間の目安としては
- 8〜9分程度
- ストレスを感じる手前
- 脈拍が上がった時(ランニングした時と同じくらい)
- 背中の真ん中が温まったら
これらを参考にするといいと思います。
水風呂
サウナ室から出たら水風呂に入りますが、その前にぬるめのシャワーで汗を流すようにしましょう。そして水風呂に入る際には大きく息を吐きながら入浴することがオススメです。心臓への血流が少なくなり、心臓への負担が軽減されるため、過度に冷たいという感覚を予防することができるからです。
しばらく水風呂に浸かっていると不思議と冷たいという感じが薄れていきますが、それは体の周りに羽衣が生じているからです。身体の表面と水の間に、暖かい層が発生し、皮膚表面を包み込んでくれるため、心地良い感覚が生じます。
水風呂を出るタイミングとしては
- 脈が安静時と同様まで落ち着く
- 呼吸時に気道がスースーする感じになる
を目安にするといいでしょう。
外気浴
水風呂からでたら次は外気浴です。水分を拭き取り、速やかにそとへ出ましょう。姿勢に関しては、立ちっぱなしは前述したDPGが拡大しにくくなってしまうので「座る」or「横になる」がいいようです。
この外気浴のフェーズで、ついに「ととのい」を感じることができます。サウナ室・水風呂の後には交感神経が優位になっておりアドレナリンが分泌された状態ですが、外気浴を行うことで副交感神経にスイッチが入ります。アドレナリンは分泌を止めますが、一度出たアドレナリンの代謝には数分の時間がかかるので体内には残ったまま。身体はリラックスしているのに頭は興奮状態となり、「ととのい」状態が完成します。この瞬間をぜひ堪能してみるといいでしょう。
外気浴を終えるタイミングは
- 5〜10分経ったら
- 足先が少し冷たく感じる
を目安にするといいです。これで1セット終了です。水分を多く失っている状態なので水分補給は忘れずに。
参考図書
本田直之・松尾大:人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?
加藤容崇:医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?
デビッド・A・シンクレア、他:LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界