NEATとは?
代謝とは?
代謝(metabolism)とは身体の中で生じるエネルギー変換のことで、主に以下の3つに分けることができます。
- 基礎代謝(BMR):呼吸や循環、消化運動など生きるために必要なエネルギー消費量のこと。
- 食事誘発性熱産生(DIT):食事によって消費するエネルギーのこと。摂取する栄養素によって変動する。
- 身体活動:運動によるものと日常生活活動によるもの(NEAT)に分けられる。
NEATとは?
Non Exercise Activity Thermogenesisの略で、日本語だと非運動性熱産生といいます。簡単にいうと、日常生活における動作で消費するエネルギーのこと。
体力向上や健康のため、目的をもって行われるランニングや水泳、筋トレなどの運動はNEATに含まれません。
洗濯や掃除、皿洗いなどの家事、仕事、買い物での移動など運動以外の動作における消費カロリーのことをNEATといいます。
NEATの特徴
肥満の人ほどNEATが低い
痩せている人と肥満の人では身体活動量に大きな差があるようです。それを示した、研究があります。
この研究によると肥満の人は痩せている人に比べ、座っている時間が2時間も長かったようです。そしてその消費カロリーの差はなんと350kcalだったそうです。350kcalはだいたいチョコレートケーキ1個分です。
肥満の人は痩せている人に比べ、これだけのNEATの差が生じているようです。しかし、考え方を変えてみれば、肥満の人が痩せている人と同じような活動をすることで、1日あたり350kcalのカロリー消費が期待できるということです。
NEATの高い人は太りにくい
活動性の高い人は肥満になりにくいようです。
NEATと体重増加の関係を調査した研究があります。この研究では、8週間ほど参加者に1日あたり1000kcal余分にカロリーを摂取してもらいました。その結果、NEATの高かったものは余剰なカロリー摂取にも関わらず、元の体重を維持していたようです。活動量によって脂肪の蓄積が予防できるようです。
ほんの少しの活動でもLPLといった酵素が活性化することで、脂肪の貯蔵を予防してくれるようです。
NEATを高めることは肥満の予防にも役立ちそうです。
活動性の高い人のNEATは50%
NEATの魅力の一つにその影響力があります。
エネルギー消費量の中で最も変動しやすく、座りがちな人のNEATは全体の15%程度であるにも関わらず、非常に活動的な人のNEATは50%以上にも及ぶそうです★。総消費エネルギーにこれだけ差があるということは、NEATが体重に与える影響は無視できるものではなさそうですね。
ある報告では、活動的な人と非活動的な人の消費カロリーの差は2000kcal/日であるともしています。
積極的にNEATを高めることで、体重のコントロールにつながる可能性がありそうです。
NEATを高めるメリット
消費カロリー増加によるダイエット効果
EBMをご存知でしょうか?Energy Balance Modelの略で、「消費するカロリーが摂取するカロリーよりも多ければ体重は減少する」といった考え方です。つまり、消費カロリーが増えるほど痩せる、ということです。まぁイメージしやすいですよね。
NEATを増やすということは、1日の消費カロリーを増やすということ。肥満の人が痩せているひとと同じような活動をすれば、1日あたり350kcalのカロリー消費をすることが可能です★。また、普段座りがちの人が本気でNEATを高めたなら、プラス2000kcalも消費できるかもしれません★。
消費カロリーが多ければ多いほど体重は減少していきます(EBM)。そのために、必要なことはNEATを高めることです。
運動と同等の効果を得られる
先述したように、NEATの消費カロリーにはひとによってばらつきが多く、その影響力は無視できるものではありません。実際にNEATを高めたことでダイエット効果がみられたという報告があります。
座りがちな肥満男女を対象に、NEATを高めるように指示しました。具体的には座る時間を減らしたり、車を使わずに早歩きや自転車で移動したり、なるべく階段を使ったりなどです。22週間後結果は以下の通りになりました。
- 体重:8.69kgの減少
- BMI:3.08kg/m2の減少
- ウエスト周囲径:9.26cmの減少
- 体脂肪率:4.89%の減少
- 徐脂肪率(筋肉量など):4.52%の増加
このように、NEATを高めることで体重の減少や体脂肪率の改善など、ダイエット効果が認められました。
NEATは従来の運動とは違い、わざわざ運動の時間を確保しなくても実践できる方法です。日々の生活にちょっとした変化を加えるだけでこれだけの効果が期待できます。
NEATを高める方法
座位行動を減らす
座位行動(Sedentary Behavior)とは、「座位、半臥位または臥位の状態で行われるエネルギー消費量が1.5METs以下の全ての覚醒行動を指す。」と定義されているようです。簡単にいうと、寝たり座ったりしてほとんどカロリーを消費しない状態のことで、読書をする、TVをみる、ゲームをする、車を運転するなどが座位行動に含まれます。NEATを高めるためには、このような活動性の低い座位行動を減らすことが重要になります。
座位行動に関しては以下のようなものが報告されています。
- TVでのCMの間は足踏みを踏む⇨ウエストやヒップ幅の軽減★
- 座位行動を中断している人ほどウエスト周囲径やBMIが低値であった★
- 座位時間が長い人ほど死亡率・心血管病のリスクが高い★
- TV視聴時間が長いほどウエストが太く、血糖値・脂質代謝が不良★
- TV視聴時間は全死亡率・心血管病死亡率と相関関係にある★
- 自動車に長く乗る人ほど心血管病死亡率が高い
座位行動が長いことの弊害は非常にも大きいです。
座位行動を減らしNEATを増やす方法としてスタンディングデスクの活用があります。
しかもスタンディングデスクには以下のような効果も期待できます。
NEATを高めるために座る時間を意識してはいかがでしょうか?特にスタンディングディスクを使うことは非常におすすめです。
HIIPAを実践する
HIIPAとはHigh Intensity Intermitted Physical Activityの略で、高負荷偶発的身体活動のことです。簡単にいうと日常生活での動作に負荷をかけてみるってことです。具体的には
- 階段を段飛ばしで駆け上る
- 散歩の時間にダッシュを挟む
- 自転車で爆走する
などがあります。
HIIPAにはHIITと同様の効果が得られる可能性があります★。HIITとは高強度インターバルトレーニングの略で以下のような効果があります。
HIIPAはわざわざ運動としての時間を確保する必要がなく、忙しいビジネスマンでも取り組める運動法です。にも関わらずHIITのような効果が期待できるとは驚いたものです。
以下にHIIPAの負荷量を載せておきます★。METsとは簡単にいうと運動負荷を表す単位であり、1METだと座ってぼーっとしている状態に相当します。
- 全速力で自転車に乗る:15.8METs
- 階段を駆け上がる:15.0METs
- 上り坂で早歩きをする:9.8METs
- ダッシュする:23.0METs
ちなみに普通に歩いた際のMETsは3METsくらいです。HIIPAは普段の生活を工夫するだけで、歩きの8倍近くエネルギー消費することが可能になります。
日常生活に少しの工夫を加える
普段の生活にちょっとした変化を加えるだでもNEATを高めることは可能です。例えば、
- 買い物をするときは普段より遠い駐車場に止める
- エレベーターやエスカレーターは使わず、階段を使用する
- 退勤時、手前の駅で降車し一駅分歩く
- 仕事では違う階のトイレを使用する
- デスクワークではスタンディングデスクを活用する
- 家の家事を丁寧に長く行う
これだけでもNEATを高めることは十分に可能です。そもそも、普段の生活における動作の消費カロリーは案外高いもの。その一例を以下に示しておきます。
ちょっと歩いたり家事をしたりするだけでも、ぼーっとしてる時に比べて何倍ものカロリー消費が期待できます。しかもこれらは普段行っている動作なので、別に運動が苦手な人でも簡単に行うことができます。
まとめ
- NEATとは非運動性熱産生のことで、普段の生活動作で消費するエネルギーのこと。家事や仕事、買い物での移動が含まれる。
- NEATの影響は大きく、肥満の人は痩せている人に比べチョコレートケーキ一個分の消費カロリーに差がある。活動的な人は総消費エネルギーの50%近くにもなる。
- NEATを高めることは消費カロリーを増加させることになるので、体重減少が期待できる。また、運動と同様の効果が見られた報告もある。
- 座位時間を減らす、HIIPAを実践する、日常生活を工夫することでNETAを高めることは可能。