運動のメリット
頭がよくなる
運動をすることで脳機能が高まり頭が良くなります。身体を動かすと、BDNF・IGF-1・VEGEといった物質が分泌されます★。
- BDNF:脳由来神経栄養因子のこと。神経同士の結合を促し脳の成長を助ける。
- IGF-1:インスリン様成長因子のこと。神経伝達物質を生成する。またBDNF受容体を多くする。
- VEGF:血管内皮細胞増殖因子のこと。血管生成により脳への栄養が運ばれやすくなる。
これらの物質の働きにより脳機能が向上するようです。
華東師範大学による研究があります。20分の有酸素運動の後、ワーキングメモリーを必要とする課題を行いました。MRIで脳活動を観察した結果、実行機能・記憶処理に関与する部分が活性化されていたそうです。また別の研究では、身体を動かすことが新たな言語を学習する際に有効であったと報告しています。
他にも運動と脳に関する報告は多くあるので以下にまとめてみます。
- 16週間の有酸素運動により認知機能が改善した。心肺機能が高い人ほど認知機能が向上した★
- 4週間のHIITによりBDNFが増加した★
- 有酸素運動によって海馬の体積が2%増加した★
- 有酸素運動とHIITにより実行機能の改善・BDNFの増加を認めた★
- 認知機能の低下した高齢者に筋トレをした結果、筋力は向上し、認知機能が改善した★
- 筋トレをした結果、認知機能の向上・炎症の軽減・身体能力の向上を認めた★
- 筋トレにより実行機能や総合的な認知機能が向上する★
- 2分間の歩行で脳への血流量が増加★
運動は身体が鍛えられるだけでなく、脳機能も磨かれていきます。ビジネスマンやエグゼクティブが運動習慣があるのも納得ですね。
睡眠の質が高まる
皆さんもご存知の様に睡眠には重要な機能が備わっています。深い睡眠である「徐波睡眠」により記憶の定着が行われます。また「グリンパティック・システム」という機能ににより脳の老廃物は除去されます★。この様に睡眠には大事な役割があるにも関わらず日本人の大半は睡眠不足だそうです★。
多くの研究により運動が睡眠の質を高めることが分かっています。カンザス州立大学のメタ分析では、運動が徐波睡眠の時間を延長させ、入眠までの時間を短縮するといった結果が確認されています。他の研究でも有酸素運動や筋トレが睡眠の質を向上させたと報告しています★★。
運動は以下のようにして睡眠を改善すると言われています★。
- 運動により体温が上昇し、徐波睡眠を誘発する
- 徐波睡眠に影響を与える成長ホルモンが分泌される
- BDNFにより気分が安定する
- 迷走神経の活性化により睡眠時の心拍数が低下する
メンタルが安定する
メンタルが不安定な人はBDNFの濃度が低く、脳の前頭前野や海馬が萎縮してしまうことで抑うつ症状が生じてしまう様です。運動をすることでメンタルヘルスを良好に保つことができます。
ニュー・サウス・ウェールズ大学の研究によると、運動によりうつ病のリスクが低下することが分かっており、運動強度に関しては関係ないそうです。また、週1時間以上運動することで将来うつ病になるリスクが12%も低下する様です。また、ある研究では1日の歩数や中強度の身体活動量が少ないほど抑うつ気分が生じると報告しています。
5-TH3(セロトニン3受容体)やIGF-1には海馬のニューロン新生を促進しうつ病を抑制する可能性が報告されています★。運動をすることで5-TH3が活性化し★、IGF-1が増加することが分かっています★。
運動とメンタルに関する報告を以下にまとめておきます。
- 毎日の平均歩数が5000歩を下回ると不安や気分の落ち込みが生じる★
- 若年成人において10分間の早歩きが気分の状態を改善した★
- 12週間の筋トレによりポジティブな気分になる★
- 警察官を対象に4ヶ月の筋トレをしたことで不安や抑うつが改善★
- 低強度(1RMの75〜85%)の筋トレを20分→不安感の減少★
- 1回の筋トレで不安を軽減する効果が120分続いた★
ダイエット効果
ダイエットには運動が欠かせません。運動には内臓脂肪を減少させる働きがあります。運動により交感神経が活性化し、カテコラミンが分泌されることにより、脂肪の分解が促進されます★。食事制限には体重を減少させる効果がありますが、内臓脂肪を減らす効果はあまり認められません★。内臓脂肪を燃焼させるには運動が必要になってきます。
運動には食欲調整ホルモンに作用し、食欲を抑えることができます。食欲に関するホルモンは
- 食欲促進ホルモン:グレリン
- 食欲抑制ホルモン:消化管ホルモン(PYY・GLP-1・PP)
の2種類がありますが、運動によってグレリンが抑制され、消化管ホルモンが増加することが分かっています★。また、運動には食欲のリズムを正常化させる働きもあるので★、肥満のもとである間食を防ぐことも期待できます。
せっかくダイエットに成功しても、リバウンドをしてしまったら元も子もありません。運動をして筋肉量を維持することで、リバウンドを予防することができます★。減量とともに筋肉量が減少してしまうと、ヒトの身体は筋肉量が回復するまで体脂肪を蓄え続けようとします★。つまり、減量の際には筋肉量を保つことが重要になってくるので、筋トレなどの運動が欠かせなくなります。
アンチエイジング
運動にはアンチエイジングの効果もあります。運動を頻繁にする者ほどテロメアが長かったことが分かりました。テロメアは染色体の末端を保護し、短縮してしまうと細胞の老化が生じてしまいます。ある研究によると、よく運動をする人は座りがちな人に比べて、テロメアの長さが10歳分も長かった様です。活動性の高い人ほど細胞の老化が遅くなることが確認されました。
ホルミシスをご存知でしょうか?過剰なら有害、適量なら有益といった考え方のことです。運動による身体負荷が生じることで、AMPK・mTOR・サーチュインといった健康長寿物質が調整されます。その結果、
- テロメアの延長
- 細胞に栄養を運ぶための血管が作られる
- ミトコンドリアの活動性が高まる
といった効果が生じ、アンチエイジング効果がもたらされるわけです。
運動とアンチエイジングに関する報告を以下にまとめておきます。
- 日頃からサイクリングを行っている中年のサイクリストは、座りがちな高齢者と比べて、反射神経・記憶力・バランス感覚・代謝能力が30歳も若かった★
- 毎日15分程度のランニングにより全死亡率が30%低下する。ジョギングの習慣があった人は心臓病による死亡リスクが低かった★
- 座位時間が最も長いグループは短いグループに比べ、全死亡率が54%高かった★
- 週平均92分運動した人は運動をしない人に比べ、寿命が3歳長かった★
- 毎日30分のウォーキングで冠動脈疾患のリスクが19%低下する★
- 筋力が高い人ほど全死亡リスクや癌による死亡リスクが低かった★
幸福感が高まる
幸せになりたくない人はいないですよね?運動をすることで幸福感を得られることが分かっています。シカゴ州立大学のメタ分析によると、運動により活力や幸福感が増すことが分かっています。30分程度の早歩きでも十分効果があるそうです。
ミシガン大学による運動と幸福に関して調査したシステマティックレビューによると以下のことがわかったそうです。
- 対象となった研究全てにおいて運動と幸福度は関係していた
- 週に10分の運動を行うことで、幸福になる確率が大幅に向上する
- 週に1回運動する人はしない人に比べて幸福度が高い
身体を動かすことにより「内因性オピオイド」「内因性カンビノイド」といった神経伝達物質が分泌されることが分かっています。これらにはポジティブな感情を高めて幸福感をもたらす効果を有しています。また、内因性オピオイドはランナーズハイの原因だとも言われている様です。
運動と幸福感に関する報告は他にもあります。
運動の種類
有酸素運動
準備中
筋トレ
筋トレには多くの効果があります。
- モテ効果:筋肉がつき見た目が良くなりモテるようになる(私見)
- 安眠効果:体温上昇や成長ホルモンにより睡眠の質が向上する★
- ダイエット効果:筋肉がつきリバウンドしにくくなる★
- メンタル効果:IGF-1によりメンタルが安定する★
といった感じで筋トレをやった方がいい理由は多くあります。その筋トレの効果を高めるために重要なことは「総負荷量を意識する」ことです。
総負荷量=筋トレの強度×回数×セット数
つまり低強度の負荷でも十分な回数やセット数を行うことで十分に効果が得られるということ。また、同じ負荷で筋トレをするのであればセット数を多くすることも大事になってきます。他にも筋トレの効果を高めるコツとして以下のようなことがあります。
- フルレンジ(Full Range)で行う
- ゴールデンタイムにプロテインを飲む
- 筋トレの前にカフェインを摂取する
- サプリを使用する
HIIT
HIITとはHigh Intensity Interval Trainigの略で、高強度インターバルトレーニングのことです。100年くらい前から一部のアスリートで実践されてきたトレーニングで、短時間で行えるにも関わらず有酸素運動と同等ないしそれ以上の効果を得ることができます。具体的には強度の高い運動と短時間の休憩を繰り返して行います。HIITの効果に関する報告を以下にまとめたのでご参照ください。
- 様々な運動の種類の中で、健康に関する遺伝子を最も活性化させた★
- 週に3日、12週間のHIITにより、有酸素運動と同じレベルで心肺機能と筋持久力が向上した(HIITは有酸素運動の5分の1の時間しか要さなかった)★
- 週に4日、4週間のHIITにより、心肺機能が約7%up・筋持久力向上・脚力が40%upした★
- 週に3日のHIITにより基礎代謝が143kcal向上した★
- 2型糖尿病患者の血糖コントロール・膵β細胞の機能を改善した★
- ラットを対象にHIITを行った結果、海馬の酸化ストレスは軽減し、BDNFは増加した★
- HIITの方が有酸素運動よりも楽しさを表す指標が高かった★
- HIITの方が有酸素運動よりも総脂肪量を28.5%多く減少させた★
- 健康な若年女性において12回のHIITはBDNFを増加させる★
タバタトレーニング
タバタトレーニングをご存知でしょうか?海外でも話題になったり、日本の雑誌などでも取り扱われたり、一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?タバタトレーニングとは、最大酸素摂取量の170%の負荷で20秒エクササイズをし、10秒間の休憩を挟む、これを6〜8セット行う間欠的トレーニングのことをいいます。このタバタトレーニングは短時間でできるにも関わらず、有酸素運動と無酸素運動が同時に行えるのが大きな魅力です。ヒトが身体を動かしたり筋肉を動かすときにはエネルギーを作り出す仕組みが必要になりますが、その仕組みは以下の3つに分けることができます。
- ATP-CP系
- 解糖系
- 有酸素系
タバタトレーニングはこれらの仕組みを全て効率よく鍛えることができる運動になります。ちなみにHIITとよく似ていると感じる方もいると思いますが、HIITはインターバルトレーニングなのに対してタバタトレーニングは間欠的トレーニングになります。
グリーンエクササイズ
グリーンエクササイズとは「自然の中で行う運動」のことをいいます。例えば、
- 公園でヨガをする
- 海辺をランニングする
- 街路樹の近くをウォーキングする などです。
グリーンエクササイズにはストレス軽減・リフレッシュ効果など、ポジティブな効果が期待できます。エセックス大学のメタ分析によると
- 5分のグリーンエクササイズにより気持ちが前向きになる
- 水のある環境で行うことで効果がUpする
ことが分かっています。他にも以下の様な報告があります。
自然環境には「フィトンチッド」という免疫力向上やストレス軽減をもたらす物質が溢れかえっているのでこの様な効果が期待できる様です。
実践方法
座位行動を減らす
座位行動(Sedentary Behavior)とは、「座位、半臥位または臥位の状態で行われるエネルギー消費量が1.5METs以下の全ての覚醒行動を指す。」と定義されているようです。簡単にいうと、寝たり座ったりしてほとんどカロリーを消費しない状態のことで、読書をする、TVをみる、ゲームをする、車を運転するなどが座位行動に含まれます。座位行動が長いデメリットは以下の通りです。
また1日の活動量がいくら多かったとしても、座位行動が多いとよくないといった考え方もあります。これを「アクティブ・カウチ・ポテト」といいます。ある研究では、対象者は十分な活動量があるにも関わらず、TV視聴時間が長いほどウエスト周囲径・血圧・食後血糖値・中性脂肪の値が不良であったと報告しています。
米国糖尿病学会(ADA)や長寿の市である野々市市も連続して座らず、定期的に立ち上がることを推奨しています。 定期的に座位時間を中断することで、ウエスト幅の改善、減量、血糖値の改善が期待できるかもしれません★。またスタンディングデスクの活用もおすすめですよ★。
NEATを高める
NEATとはNon Exercise Activity Thermogenesisの略で非運動性熱産生のこと。簡単にいうと、日常生活における動作で消費するエネルギーのこと。筋トレやランニング・水泳などの運動はNEATに含まれません。掃除や洗濯などの家事、仕事、買い物時の移動などがNEATになります。
肥満の人のNEATは低く、痩せている人と比べると、座っている時間が2時間も長く、350kcalも消費カロリーに差が生じているそうです★。また、座りがちな人のNEATは1日の消費エネルギーの15%程度ですが、活動的な人のNEATは50%にもなります★様にNEATの影響力は大きいです。
NEATを高めることで、消費カロリーが増加しダイエット効果が期待できます。実際にNEATの増加が運動と同様の効果をもたらしたという報告も。NEATを高めるには以下の様な方法があります。
- エレベーターではなく階段を使う
- 違うフロアにあるトイレを使用する
- 普段より遠い場所に駐車する
- 座位行動を減らす
- スタンディングデスクを活用する
- 通勤時、一駅手前で降りて歩いてみる
この様にちょっとしたことでNEATを増やすことができます。運動としての時間を確保する必要がないので忙しい人にもおすすめですよ。
歩数を増やす
歩数を増やすことも重要です。日本の中之条という町で行われている研究によると、1日の歩数が増えるごとに予防できる病気も増えていくことが分かっています★。具体的には1日あたり4000歩歩くことで「うつ病」の予防に、8000歩歩くことで「高血圧」や「糖尿病」が予防できるようです。注意点としては、ただダラダラ歩くだけでなく、早歩きをすることも必要だということが分かっています。
歩数を増やすには活動量計を身につけることも有効です。ある研究によると、運動不足の人に16週間活動量計を持たせただけで1日の平均歩数雨が4000歩近くも増えたそうです★。厚生労働省によると、成人の推奨歩数は男性で9000歩、女性で7000歩となっています。まずはこの数字を目指してみてはいかがでしょうか?
HIIPAを実践する
HIIPAという言葉をご存知でしょうか?High Intensity Incidental Physical Activityの略で日本語だと「高負荷偶発的身体活動」となります。どういうことかっていうと、「日常生活における動作に負荷をかける」ってことで、例えば
- 駅の階段を全力で駆け上る
- 普段の散歩の中にダッシュを取り入れる
- 通勤の自転車で爆走する
などがHIIPAに当てはまります。このHIIPAにはメリットがありますが、それは「HIITの代わりになる可能性がある」ということ★。アメリカの保健福祉省は「すべての行動は運動の時間として考えるべきだ」と述べているようです★。つまり、ジムのエアロバイクを全力で回そうが、日常の自転車で爆走しようが、身体を動かしていることに変わりはないということです。
多くの人が運動をできていない理由として「時間が足りない」ということを挙げています。HIIPAは日常生活に少し工夫を加えるだけなので、わざわざ運動としての時間を確保する必要はありません。私服で息があがっているのは側から見たらシュールかもしれませんが、このHIIPAをぜひTRYしてみてはいかがでしょうか?
ランニングをする
ランニングには運動と同様に多くのメリットがあります。
- 脳トレ効果:ランニングにより脳の成長に重要なBDNFが増加する★。また、脳の炎症や酸化ストレスを軽減させアルツハイマー病の予防にもなる★。
- アンチエイジング効果:多くの病気が予防できる★。生存率が4年延びる★。
- 安眠効果:毎朝30分のランニングにより徐波睡眠が増加する★。
- メンタル安定効果:ランニングをしている人は座りがちな人に比べて不安感が少なく★★★幸福感が高い★★。
普通に走るのもいいですが一工夫加えてみるのもまたおすすめです。自然の中で走る「グリーンエクササイズ」をしてみたり、ダッシュと休憩を繰り返す「HIIT」を実践してみたりと色々バリエーションをつけることも可能ですよ。
Weekend Warrior(週末戦士)
週末休みなど、”ここぞ”とばかりに運動をしまくる人のことをWeekend Warrior(週末戦士)と呼ぶようです。どうやら、毎日の運動習慣ではなく、週末だけの運動でも効果は示されているようです。男性8000人を対象にした研究によると、週末だけ運動をしている人でも、何も運動しない人に比べると明らかに長生きする傾向があったそうです。運動ができない主な原因は時間の欠如です★。忙しいビジネスパーソンも休日だけでもジムで過ごしてみるのはいかがでしょうか?
サウナに入る
運動ではないですがサウナはエクササイズと似た様な効果が得られることが分かっています。フィンランドに住む中年男性2300人を対象にした研究によると、頻繁にサウナを利用する人は週1回利用する人に比べて、心疾患リスクや全死亡リスクが半分程度だったそうです。
サウナもホルミシスの一種で、適度な熱刺激により我々に恩恵をもたらすようです。サウナによりNAMPTという酵素を介し、サーチュインといった健康関連物質を活性化するようです★。サウナに関する他の報告を以下にまとめておきます。
- 普段からサウナを利用している人は炎症レベルが低い★
- 8週間の温水入浴により血管の硬さ・動脈壁の厚さ・血圧が改善した★
- サウナにより認知症・アルツハイマー病のリスクが65%低下した★
- 30分間のサウナ入浴により動脈硬化・血圧が改善した★
- サウナを利用する人はそうでない人に比べ、身体機能や活力など健康状態全般において優れている★
まとめ
準備中